(一途な恋 シリーズ)

普通(第10章)

 

彼女と別れて2年後、私は結婚し関東に引っ越しをした。
私と別れて5年後、彼女は結婚した。

なんか滑稽ではあるが、お互いの結婚式に友人として参加した。

一番愛している人に、キスしているところを見られ、
一番愛している人がキスをしているのを見る。

先に結婚したのは私のほうなのに、彼女の結婚式に参列した私は終始イライラしていた。
気がつくと手に力が入って、ネイルが手の平に食い込む。

なんで菜々子の横にいるのがあんたなのよ!
こいつそんなにいい男?
ただのノッポじゃひょろっこい!
男のくせにしっかりしゃべれよ!

心の中は、辛らつな言葉でののしり続ける。


でも・・・それでも、菜々子をよろしくお願いします。
どうぞ、幸せにしてあげてください。

菜々子は、甘いものが好きです。ちょっと機嫌が悪いときはケーキを買ってあげてください。
菜々子は、大きな声で笑います。その大きな声がまわりも明るくします。
菜々子は、よくつまづきます。いつも横を歩いてやってください。
菜々子は、おっちょこちょいです。ちゃんと見ていてください。(信号無視多し)
菜々子は、寂しがりやで。いつも抱きしめて安心させてやってください。
菜々子は、我慢強いですが顔に出ます。ちょっと変化があったら傍で声をかけてください。

私では菜々子を幸せにできないから・・・どうぞよろしくお願いします。

私が菜々子に一番あげたかったものは「普通」
でもその「普通」を私は菜々子にあげることは絶対にできない。


日々の家事に追われながら、仕事をして、育児の悩みを持つ。
ごくごく普通に毎日が過ぎていく。


私たちは、今この時もそれぞれの「普通」の道を歩んでいる。

 

                  〜 fin 〜

 

 

 

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