(一途な恋 シリーズ)

一貫した矛盾(第9章)

 

社会人2年目の5月。私たちのこの関係にピリオドを打った。

 

今までも何度か別れ話はしていたが、今日は菜々子の気を引くためのものでも

なく、真剣に悩んで出した私の結論を強い意志で伝えた。

 

夕食にイタリアンを食べた後に切り出した。

 

何度もシュミレーションした別れ話だけど、なんて言ったのか憶えてない。

ただ私の勝手な結論を、菜々子は素直に受け入れてくれた。

そして、お互いおばあちゃんになった時、1人だったら一緒に暮らそうと約束した。

 

安いメロドラマのような馬鹿げた約束だけど、10数年後の今も、私の大切な大切な約束である。

菜々子は忘れているかもしれないけれど、私の心の支えである。

 

別れ際に、暗くなった駐車場で最後のキスをした。

「愛している」ありったけの想いをこめてキスをした。

このまま合わせた唇から、愛がこぼれて、私の心が全部流れて

しまうじゃないかと思うくらい、想いを込めてキスをした。

これが最後。これで最後。

 

私は、帰宅した部屋で電気をつけず思いっきり泣いた。いっぱい泣いた。

あたり一面、物をなげちらかし、枕に顔をうずめた叫んだ

 

気がついたのは朝の4時。

重い目をゆっくり開ける、散乱した部屋がぼんやり映ってくる。

でも目が痛くて、こうこうと電気がついいた部屋には焦点があわない。

とりあえず、熱いシャワーを浴びた。

 

目が覚めたら、狂って死んでいるじゃないかと思ったが、普通に息をしていた。

時間の針がまわりお腹が空く。トイレにも行きたくなる。

ただ、菜々子の温もりにふれることができないだけで、私は何も変わっていなかった。

あたりまえだけどね。

 

・・・・・・・

 

別れた翌週、恋人から親友となった菜々子と一緒遊んだ。

 

微妙な距離感を保ちながら。

 

街を歩いていて、よろけそうになる彼女の手をとる。

「気をつけなよ」ぎこちなく手を離す。

この前までは、腰に手をまわしていたのに・・・

 

彼女の部屋でレンタルビデを見る。

フローリングに座って映画を見る。

この前までは、私の定位置はベッドだったのに・・・

2人でベットに腰かけ映画を見ていたのに・・・

 

恋人から親友へ

 

私なりに線引きをしているが、彼女は気づいているのだろうか?

お願いだから、私の前で着替えないで・・・かわいいピンクのレースの

下着姿で「タオル取ってー」とか言わないでよ。

これって生殺し?

 

 

・・・・・・・

 

それから数カ月して、私は今の旦那と出会う。

彼女を忘れるために、すごく積極的に旦那にアプローチをした。

付き合う事になって、彼女にも紹介した。

3人で食事したり、遊んだり。

 

表向きは、もう私は新しい道をすすんでいるよ。もう平気だよ。

でも内心は、一番好きなのは菜々子だよ。菜々子とずっと一緒にいたいよ。

 

矛盾だらけの私の行動。

でもその矛盾を含めて肯定するしかなかった。

 

 

(そういえば、私が彼氏を紹介したとき、菜々子はどんな気持ちだっただろう。

もちろん聞くことさえできなかったし、私には聞く権利がない。)

 

 

 

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