(一途な恋 シリーズ)

かけひき(第3章)

 

人間とは欲深い生き物である。
それも非常に貪欲である。

私は菜々子に手紙を書いた。

文章まで覚えていなが、

私はあなたが好きです。

でもあなたを傷つけてしまうのであきらめます。

という内容のものだった。

その手紙を、年があけてすぐポストに投函した。

 

成り行きであんなことしたのではないと改めて伝えたかった。

でも本当は単にこの手紙を受け取った菜々子の反応がみたかった

だけなのかもしれない。

 

菜々子の返事は

 なかったことにしようね なのか

 これからも… なのか

 

 

2年生3学期初日

「おはよう~」、何事もなかったように、菜々子は接してきた。

私はなんて声をかければいいのか分からなかった。

 

もう手紙は届いているはず、読んでいるはずなのに…

 

あの日の出来事は、幻か夢なんだろうか?

あんなに…あんなに…苦しいよ…苦しいよ。

 

きっと菜々子には、ちょっとした過ちだったのだろう。

それとも単なる好奇心?
なんだかもう、消えてしまいたい……

 

 

新学期から3日目。

菜々子からの手紙が届いた。

 

この時のことを、当時私はこんな風に日記に残していた。

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

「うそつき」

見覚えのある字の差出人の手紙を見て、私は思わず叫んだ

 

その手紙を持って急いで階段を駈けあがり、自分の部屋に入った

なんで?そう思いながら封を開いた。

 

BEDの上、仰向けとなった私は、とめどなく流れ落ちる涙を

どうすることもできずにいた。

うれしくて…うれしくて…

何度も何度、涙であふれてくる瞳をこすりながら、見覚えある字を

読み返していた……あいたい

 

声が聞きたくなって、10円玉をいっぱいにぎりしめて電話BOXに行った。

受話器から聞こえてくる声に体全身が震えて、私はその場にしゃがみこんで

しまった……あいたい

 

いろいろ話をした。内容はほとんど憶えていない。すごく動揺していたから。

ただ幸せすぎて「これから」がとても怖かった。

 

外はとても寒かった。

私の息で白く曇っていく電話BOXに書いた一言……あいたい

 

~~~~~~~~~~~~~~



菜々子からの手紙には、私のことが好きだと書かれていた。



今から進む私たちの道は幸せなのか?それとも不幸なのか?

まだまだ大人になりきれず、気持ちだけで行動してしまう17歳は、所詮子ども。

 

それでも、私なりに考えた。

それが浅はかで、せつなで、自分本意なものだったとしても。

本当に真剣に考えた。

 

愛する人を守れるくらい強くなりたい

愛すれば愛するほど、強くなりたかった。

 

あの頃の私はいつもそう想っていた。

 

 

 

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