(一途な恋 シリーズ)

すすむ道(第5章)

 

菜々子が他の人を好きになる日かいつかくるだろう。

今、2人は愛し合っているとしても、きっとその時はくるだろう。

菜々子を手に入れた喜びと同時に、失う不安を感じずにはいられなかった。

 

新学期がはじまり、私たちは高校3年生になった。

学校の玄関に貼りだされたクラスの名簿。

菜々子と同じクラスになった。

 

この教室が思い出に変わるとき、私の想いも思い出になるのだろうか?

こんなに真剣に悩んで苦しんだこの想いをただの思い出にしたくない。

 

私はここの高校が嫌いだったが、菜々子と同じ時間を過ごせるここを

ちゃんと意味のある場所にしたいと思った。

笑って、泣いて、ケンカして、愛しあって。

一度しかない18歳を、菜々子にささげたかった。

 

ここから私たちは始まったのだから。

 

私たちはよく笑った。

飽きもせず、毎日好きなバンドの話をした。コンサートも一緒にいった。

 

私はよく泣いた。

今が幸せすぎて、いつこの幸せがなくなるかと思うと、不安になり情緒不安定になることがあった。

 

私たちは、ささいなことでよくケンカした。

ケンカしているときは、不自然なほど距離を置いているが、一緒に帰っていた。

友人たちは、「またケンカしたの」といつもの呆れ顔。

 

そんな中でも、1日、1分、1秒 確実に私の想いは確実に深まっていた。

 

夏になり秋になり冬。私たちは高校3年生にとっては人生の大きな岐路に立っていた。

 

私は高校卒業と同時に2人に別れがくると予想をしていたが、菜々子が

「一緒の大学に行かない?」

と誘ってくれた。

彼女は、理数系が得意で、大学では理工学部で学びたいと言っていた。

私はというと、特にやりたいこともなく、ただ、菜々子と一緒にいたいそれだけだった。

「一緒にいたい」それだけじゃダメなんだろうか・・・

 

とりあえず、同じ大学を受けてみた。菜々子は受かった。

私は落ちた。(まあ当然の結果だろう、勉強してなかったし)

でもなんとか菜々子の大学の近くの大学に合格した。

 

大学は県外。実家から通えるはずもなく2人とも一人暮らし。

親から離れて、新しい土地で新しい環境で、菜々子との生活がはじまる。

 

今にして思えば、ただのわがままの甘ちゃん。

私たちは親のすねをかじり、4年間の自由を手に入れた。

 

 

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