(一途な恋 シリーズ)

戻る場所(第7章)

 

菜々子は私がこんなに菜々子のことを愛していることを知っているのだろうか?

胸を開いて、ドキドキしているこの心臓を見せればわかってくれるだろうか?

菜々子が思っている以上に私は菜々子を愛している。

 

ただ、その想いは、重荷にしかならないから、ブレーキをかけるような態度ばかりとっていた。

 

最近、菜々子の会話には男の人の名前が出てくる。

同じサークルの人や、バイト先の人。

菜々子にへんな虫がつかなか心配だけれど、嫉妬のそぶりもみせない恋人を演じていた。

 

菜々子が男の人を好きになって付き合ったとしても、私が口を出す権利はない。

 

付き合ったばかりの17歳頃は、なんで私を選んだの?どこが良かったの?

本当にいいの?女同志だよ?とこの恋に自信が持てなくて、不安を疑問文に

変えて菜々子にぶつけてばかりいた。

 

大学生になって、少しは愛されている自信が持て、強くなったつもりだけど

無条件にアドバンテージを持っている男の人には一歩引いてしまう。


もし菜々子が私以外の誰かを好きになってしまったら…

その時は苦しいけど、いつか忘れられるのかな?

今の背徳の想いの苦しさと、どっちが苦しいのだろう?

 

大学生活も慣れたころ、私たちは週に3日は会っていた。

週で3回一緒に買い物に行き、ご飯を食べ、体重ね愛確かめ合える幸せ。

それで十分だった。

それ以外の時間は、それぞれの時間だと割り切ろうと思った。

 

菜々子に依存しないよに、私は私の世界を見つけるためバイトを始めてみた。

いろんな友達とも遊ぶようになった。何人かの男の人とも付き合ってみた。

 

でも結局、頭の中は菜々子のことばかり。

菜々子しかいないとわかっているのに、一人暮らし2年目の春。

「別れよっか」と言ってみた。

 

新入学生が入り、新しい季節が始まる。

今ならまだ菜々子を手放せると思ったから。

 

一人暮らし3年目の春も。

「別れよっか」と言ってみた。

ここで菜々子を手放さないと、もう戻れないと思ったから。

 

一人暮らし4年目の春。

「別れよっか」とは言えなかった。

もう菜々子を手放すことはできない。

 

学生なんて所詮、子ども。

親のすねをかじり、遊べるのもあと1年。

だからこそ、菜々子と一緒にこの最後の1年を大切に過ごしたいと思った。

 

大学の4年間。菜々子とはいっぱい遊んだ。

海外旅行、ライブ、ボーリング、ケーキバイキング等

全部、全部楽しかった。

 

今から約10数年前。本当に幸せだった。私は本当に幸せだった。

手を伸ばせば、すぐそばに菜々子がいた。

 

たまたま、好きになった人が同性だっただけ。

同性という障害があっても、それを乗り越えるのが本当の愛。

本当の愛が2人を熱くする。

何が悪いの?誰にも迷惑かけてない。

 

都合のいいように解釈して、同性愛について正面から向き合っていなかったあの頃。

 

菜々子を抱くたびにいつも感じていた。

確かなものはこの温もりだけで、他はすべて偽りだと。

この温もりの中、私たちの想いも確かないものにしたい。「永遠」にしたい。

 

 

「永遠」なんて何もないのにね。 

 

 

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