(一途な恋 シリーズ)

逃れぬ重圧(第8章)

 

3月。無事2人とも大学を卒業した。

私たちはお互いの親から、県外の大学に行ってもいいが、就職は県内にしてほしいと言われたいた

 

4年間スネをかじらせて頂いたので、そこはご要望どおり2人とも県内の企業に就職した。

そして申し合わせたように、会社はお互いの実家からは

通えない距離。つまりIターン就職。

もちろんこれからも1人暮らしだ。

菜々子も私も新しくマンションを借りた。

2人の新しい住まいは、車で10分程度の距離。

仕事帰りにいつでも顔を見にいける距離だった。

 

お互いIT系の仕事に就いた。仕事は初めてのことばかりで

毎日クタクタだった。仕事して、週末会って、愛しあって。

2人の関係は何も変わっていなかった。ただ目に見えない重圧を感じるようになっていた。

 

菜々子も私も、ひとりっ子。

田舎で育った私たちは、家、名前を継がなければならなかった。

名前なんてバカらしいと思うけど、親の姿をみているとくだらないの一言で片付けられない問題だった。

 

 

私は幼少期に父親を亡くした。

母は女の手一つで私を育てた。

 

昔、母に聞いたことがあった。

「お父さんのこと好きだった?」

お見合いで結婚した2人は、たった2年間の夫婦生活だった。

「すごくやさしいお父さんだったのよ。海が好きでね。

休みの日は、いつもドライブに連れて行ってくれたのよ。

たった2年間だったけどいっぱいの幸せをもらったの。

亡くなってからも助けてもらっていたのよ。

何かあればいつもお父さんに手を合わせて

お願いしていたの「良いほうに導いてください」って、

今が幸せなのはお父さんのおかげ。だからお母さんはお父さんと

一緒のお墓に入りたいの。この名前を守りたいの」

 

 

たった2年でこんなに愛し合えた2人がうらやましいと思った。

相手がいなくても、自分が想っているだけでも「愛」なんだと思った。

 

だだ、それと同時に私には重いとも感じた。

 

 

このままがいい。

このままじゃだめ。

菜々子と付き合った時からの堂々巡りの自問自答。

 

 

私が菜々子を縛っている。私が放してあげないと、菜々子は前に進めなくなる。

 

今まで好き勝手、自由にしてきたけど、「結婚」、「子ども」

社会人の私たちは、現実と向き合って前に進むことを考えなければならないと思った。

 

私が始めただから、私が終わらせる。

それが私なりの彼女への責任のとり方。

 

別れても私は、一生菜々子を想い続ける。愛し続ける。

 

 

 

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